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第一部:社員を変えない人材育成【第3章】なぜ「正論」を言うほど組織は死ぬのか? ― 正しさという名の凶器 ―

この記事では、
多くの経営者が抱く「俺は、間違ったことは言っていないはずだ」という信念こそが、
実は組織の成長を止める最大の原因だとしたら?
良かれと思って放つ「正論」が、なぜ社員の目を曇らせ、組織の息の根を止めてしまうのか。
コンサルタントとしての挫折と、重度自閉症の娘との葛藤から見えた、「正しさ」という名の凶器の正体を解き明かし、
「正しい答え」を伝えることよりも大切な、組織に「主体性」を宿らせるための真実をお伝えします。

「俺は、間違ったことは言っていないはずだ」
と、多くの経営者が、この信念を胸に日々決断を下しています。

社員を思い、会社を良くしたいと願うからこそ、
「正しい答え」を必死に伝えようとします。

かつての僕もそうでした。コンサルタントとして、誰よりも「正解」を知っていること、
そしてそれを論理的に提示することこそが、自分の価値だと信じて疑いませんでした。

しかし、僕が緻密なロジックで相手を論破すればするほど、
現場の空気は冷え込み、社員の方々の目は光を失っていきました。

なぜ、正しいはずの言葉が、
相手を動かすどころか、組織の息の根を止めてしまうのか。

そこには、無意識に目を逸らしている「正しさ」の残酷な正体が隠されています。

1.正論は、相手の心を閉ざす「シャッター」である

正論の最大の特徴は、それが「ぐうの音も出ないほど正しい」ことです。

「納期を守るのは当たり前だ」
「プロなら顧客の満足を第一に考えるべきだ」

これらの言葉はあまりに正論であるがゆえに、
言われた側は「はい」と答えるしかありません。

しかし、その「はい」の内側で起きているのは、納得ではなく「断絶」です。

人は正論で詰められると、言い返せない無力感とともに、
「今の自分を全否定された」という痛みを感じます。

すると、脳は自己防衛のために心のシャッターを下ろします。

社長が「正しいこと」を言えば言うほど、社員の心は遠ざかり、対話は死んでいくのです。

2.問題の方程式で暴く、社長の「隠れたエゴ」

なぜ、多くの経営者は、これほどまでに「正論」に固執してしまうのでしょうか。

ここで、第1章でお伝えしたあの問題の方程式を、社長(リーダー)の心理に当てはめてみましょう。

P (Problem) = F (Fact) + I (Interpretation)

ある時、社員が納期に遅れた(F:事実)とします。

それに対し、経営者やリーダーはこう解釈します。

I(解釈):
「上長の俺が、この社員の『能力不足』や『意識の低さ』を正しく改善しなければならない」

すると、目の前には「教育すべきダメな社員(P:問題)」が誕生します。

ここで一歩踏み込んで自分に問いかけてみてください。

このとき、必死に守ろうとしているのは、本当に『会社の成果』や『目先の結果』だったのでしょうか?

多くの場合、守っているのは、「自分は正しい」という優越感です。

正論という武器を使って、
「俺はできているが、お前はできていない」という格差を確認し、安心したいだけではないか。

その傲慢な「解釈」が透けて見えるからこそ、社員は反発し、成長が止まるのです。

3.「家庭」という逃げ場のない現場での気づき

この「正しさのワナ」は、ビジネスの現場以上に、僕のプライベートを蝕んでいました。

重度自閉症の娘との生活の中で、
僕は「普通はこうするべきだ」「これが正しい教育だ」という正論を振りかざし続けました。

しかし、僕が「正解」を押し付ければ押し付けるほど、
娘は激しいパニックに陥り、状況は悪化する一方でした。

絶望の中で気づいたのは、僕の正論は、娘を救うためのものではなく、
思い通りにいかない現実に耐えられない僕が、自分を守るための「盾」だったということです。

正論は、相手の「今、ここにある現実」を無視し、
自分の理想を押し付ける行為に他なりません。

経営者が社員に「正しいこと」を言うのは、
必ずしも誠実な向き合い方ではありません。

それは時として、「自分の理想に合わないお前は認めない」という冷徹な拒絶になり得るのです。

4.「正しさ」から「可能性」へ

多くの組織を再生させてきた結果、僕が「正しさ」の代わりに手に入れた新しい指標があります。

それは、「その言葉は、相手の可能性を広げるのか?」という視点です。

どんなに論理的に正しくても、相手が萎縮し、自尊心を失い、思考停止に陥ってしまうのであれば、
その関わりはプロとして「間違い」です。

リーダーの真の仕事は、自分の正しさを証明することではありません。

社員が自ら動きたくなる「余白」を作ることです。

社長が「正論」という凶器を脇に置き、

「そうか、君にはそう見えているんだね」

と相手の事実(F)をそのまま受け入れたとき、
その余白にこそ、社員の主体性と創造性が宿り始めます。

5.毒を薬に変える「問い」

もしあなたが、社員に対して正論をぶつけそうになったら、
一度だけ自分にこう問いかけてみてください。

「今、自分はこの人の成長に役立ちたいのか。それとも、自分の正しさを証明したいのか?」

もし後者だと一瞬でも感じたなら、その言葉を飲み込んでみてください。

あなたが「正しさ」への執着を手放したとき、
組織に初めて「信頼」という名の温かい血が通い始めます。

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なぜ「正論」を言うほど組織は死ぬのか? ― 正しさという名の凶器 ―

【第4章】(掲載準備中)
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【第5章】(掲載準備中)
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著者プロフィール

社員を変えない人材育成の専門家 奥田 政弘

経営コンサルティング歴20年以上のキャリアを持つ。「社員を変えようとせず、社長のあり方を変える」ことで組織を劇的に再生させる独自手法を提唱。

その原点は、重度自閉症の娘との15年にわたる格闘と、絶望の先に見つけた「コントロールの手放し」にある。心理学に基づいた問題解決の方程式「P = F + I」を武器に、数千万円を投じても変わらなかった組織を、わずか数ヶ月で自律型組織へと変貌させる実績を多数持つ。

「会社はトップで120%決まる」という信念のもと、唯一無二の社員を変えず、社長のあり方を磨くアプローチで長年解決できない人材育成の悩みを即解決する支援している。

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